腹式呼吸と胸式呼吸は、何が違うんだろう。
腹式呼吸のやり方が知りたいよ。
胸式呼吸のメリットって何だろう。
腹式呼吸のメリットが強調されるけど、胸式呼吸はダメなのかな。
今回の記事は、このようなお悩みに対する内容です。
歌の勉強を始めると、腹式呼吸が強調されますよね。
私は独学なので、歌の練習を始めた当初、よくわからず、万能なものだと思っていました。
とにかく腹式呼吸をすれば、いい声になる、音域が広がる、みたいな感じです。
でも、そんなことは無いんですね。
腹式呼吸だけを意識しても、声が良くなったり、音域が広がったりするということはありませんでした。
そこで考えたのが、今回の内容です。
今回の内容を意識した結果、腹式呼吸のメリットを生かした歌い方ができるようになりました。
私が歌う時に一番意識しているポイントは、息の量です。
ただ、息の量は調節しなければなりません。
その息の量を調節する仕組みについての内容が、今回の内容です。
ぜひ、最後までご覧ください。
では、スタートです。
腹式呼吸と胸式呼吸の違い
腹式呼吸の2つのメリットをお伝えする前に、まずは、腹式呼吸と胸式呼吸の違いを解説します。
まず、空気を取り込む時は、肺に取り込みます。
お腹には取り込みませんので、ご注意ください。
ただ、肺に取り込みますが、肺自体が広がって空気を取り込むことはできません。
そこで、空気の取り込み方を工夫します。
横隔膜を使って取り込む方法と、肋骨を使って取り込む方法です。
そして、それが、胸式呼吸と腹式呼吸です。
なので、腹式呼吸と胸式呼吸の違いとは、空気の取り込み方の違いです。
腹式呼吸の2つのメリットをお伝えする前に、もう一つ。
次は、それぞれの発声法の具体的なやり方を解説します。
まずは、胸式呼吸からです。
胸式呼吸とは?
では、胸式呼吸のやり方を解説します。
肺は、肋骨に張り付いているので、肋骨を広げると肺も広がります。
その結果、肺に空気が取り込まれます。
その結果、肋骨や肺も縮まり、肺から空気が放出されます。
胸式呼吸のメリットは、息を吐く時も筋力を使えることです。
肋骨を狭める筋肉を使って、素早く空気を押し出せます。
これは、運動時に胸が上下する呼吸です。
その結果、素早く酸素を取り込めます。
腹式呼吸とは?
次に、腹式呼吸のやり方を解説します。
横隔膜とは、肺の下にあるドーム状の筋肉です。
力を入れて収縮させると、水平に近づくように下がります。
肺と横隔膜は同じ空間にあるので、横隔膜を収縮させることで、空間が広がり、肺も広がります。
その結果、肺に空気が取り込まれます。
その結果、肺自身も縮まり、肺から空気が放出されます。
ただし、腹式呼吸を練習する場合、注意点していただきたいことがあります。
下記の文章をご覧ください。
これらは “胴まわりが動く” “お腹が動く” と感じられるかもしれませんが、 ”横隔膜が動く” とは感知できません。
(『歌う人のためのはじめての解剖学~しなやかな発声のために~』 株式会社誠信書房、著者 川井弘子、監修者 坂井建雄、発行者 柴田敏樹、2021年、p.65)
つまり、腹式呼吸で感じる変化の位置は、横隔膜の位置ではないということですね。
お腹の辺りで変化を感じるかもしれませんが、実際の横隔膜の位置は、その上の肋骨の内側です。
ぜひ、位置関係を注意してください。
腹式呼吸の2つのメリットとは
では、ここまでの内容を前提に、私が意識している、腹式呼吸の2つのメリットをお伝えします。
ここからは、歌唱中の状況を3つに分けて、それぞれの状況で得られるメリットとしてお伝えします。
息を吸う状況でのメリット
まずは、息を吸う状況でのメリットです。
なぜなら、横隔膜という筋肉は、肋骨の筋肉よりも、ノドや首から遠い位置にあるからです。
最大量の息を吸うことだけを考えれば、胸式呼吸と腹式呼吸の両方を使うべきでしょう。
ただ、胸式呼吸では、肋骨の筋肉を緊張させて肺を広げるので、近くにあるノドや首にも緊張が伝わりやすいです。
一方で、腹式呼吸では、肋骨の内側にある横隔膜を緊張させるので、ノドや首まで緊張が伝わりにくいです。
なので、息を吸う状況でのメリットとは、胸式呼吸よりも、ノドや首を緊張させにくいことです。
息を溜める状況でのメリット
次は、息を溜める状況でのメリットです。
なぜなら、肺を広げる時の制限が、胸式呼吸の場合よりも少ないからです。
胸式呼吸では、肋骨を広げることで肺を広げます。
関節や軟骨の動きなので、制限が強くかかります。
一方、腹式呼吸では、横隔膜を下げることで肺を広げます。
筋肉の動きなので、関節や軟骨の動きよりも、制限がかかりません。
その結果、腹式呼吸の方が、肺を大きく広げられ、息をたくさん溜められます。
なので、息を溜める状況でのメリットとは、胸式呼吸よりも、多くの量を溜められることです。
息を吐く状況でのメリット
最後に、息を吐く状況でのメリットです。
なぜなら、横隔膜という筋肉は、肋骨の筋肉よりも、ノドや首から遠い位置にあるからです。
このメリットは、息を吸う状況でのメリットと同じです。
しかし、内容が違います。
日常の呼吸では、息を吐く時、力を抜くだけです。
それだけで、勝手に肺が縮まります。
しかし、プシューと肺から一気に出てくる息の量は、声帯で振動を作るには多過ぎます。
また、すぐに無くなってしまうため、音を伸ばすこともできません。
そこで、吐く息の量を調節します。
胸式呼吸で調節する場合、肋骨の筋肉を緊張させて、肺の収縮を抑えます。
ただ、先程確認したように、ノドや首にも緊張が伝わりやすいです。
一方で、腹式呼吸で調節する場合、横隔膜とそれを補助するお腹周りの筋肉で、肺の収縮を抑えます。
この調節方法も、先程確認したように、ノドや首に緊張が伝わりにくいです。
なので、息を吐く状況でのメリットとは、胸式呼吸よりも、ノドや首を緊張させにくいことです。
以上が、腹式呼吸の2つのメリットです。
下記にまとめました。
状況 | メリット |
---|---|
吸うと吐く | ノドや首を緊張させにくいこと |
溜める | 多くの量を溜められること |
腹式呼吸を難しいと感じている方へ
歌の練習を始めたばかりの方は、腹式呼吸を難しいと感じるかもしれません。
なぜなら、日常の呼吸でも、腹式呼吸を使っているからです。
日常の呼吸では、胸式呼吸と腹式呼吸の両方を使っています。
つまり、変に意識しなければ、問題なく腹式呼吸を使えるということです。
変に意識してしまうので、余計な筋肉に力を入れてしまいます。
日常の呼吸の延長線上で考えられます。
なので、腹式呼吸は難しくありません。
私が腹式呼吸を練習した時に、参考にさせて頂いた本をご紹介します。
私は、こちらの本の、p.40-43を参考に練習しました。
説明が具体的で分かりやすく、歌唱中に意識しやすかったです。
歌声と呼吸法の関係
最後に、歌声と腹式呼吸の関係をお話しします。
なぜなら、歌声は息ではないからです。
歌声は、息を声帯に当てて、そこで生まれた振動を共鳴で増幅させることで作られます。
つまり、歌声を良くするということは、振動や共鳴を良くするということです。
腹式呼吸か胸式呼吸か、ということは、その前の段階ですよね。
腹式呼吸と胸式呼吸のどちらを選択したとしても、結局、声帯が求めることは同じです。
それは、声帯が上手く振動できるような息の量に調節して欲しいということです。
なので、腹式呼吸を使えるようになったからといって、必ずしも歌声が良くなるわけではありません。
逆に言えば、腹式呼吸でも、胸式呼吸でも、その両方でも、自分に合っていれば問題ないということです。
プロの方の中には、表現によって使い分けたり、胸式呼吸だけの方もいらっしゃるようです。
まとめ
まとめです。
そのメリットとは、下記の2つでした。
状況 | メリット |
---|---|
吸うと吐く | ノドや首を緊張させにくいこと |
溜める | 多くの量を溜められること |
私が歌の練習を始めた初期の頃は、何から手を付けていいのか分かりませんでした。
なので、ボイストレーニングの話題でよく出てくるというだけで、とにかく腹式呼吸を意識して歌いました。
今となって思えば当然のことですが、それだけでいい声が出たり、音域が広がったりすることはありませんでした。
役割が違うので当然ですよね。
なので、ぜひ、そのメリットを理解した上で腹式呼吸を練習してください。
ちなみに、私は、今回お伝えした腹式呼吸を意識して、息の量を調節しています。
息の量は、私が歌う時に一番意識しているポイントです。
そちらの記事も、ぜひご覧ください。
では、今回の記事は、これで終わりです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。