脱力を意識してるけど、声帯で上手く振動を作れないよ。
音程を上げるほど、息が漏れちゃってる気がするな。
声帯閉鎖を意識するといいって聞いたけど、本当かな。
声帯閉鎖を意識すると、喉が痛くなっちゃうよ。
今回の記事は、このようなお悩みに対する内容です。
“歌は脱力が重要。”
そんな言葉を耳にします。
私も意識してきましたし、現在でも意識しています。
ただ、脱力を意識し始めた当初、歌唱中に音程を上げると、声帯で振動を上手く作れなくなるという問題が発生しました。
ひどい息漏れのようになってしまうのです。
そして、無意識に息の量を増やすようになり、結果的に、脱力を失敗してしまうという悪い流れに悩んでいました。
そこで考えたのが、今回の内容です。
そして、幅広い音域で、しっかりと振動を作れるようになったのです。
今回の内容は、歌声を効率よく作るという点でも非常に重要です。
ぜひ、最後までご覧ください。
では、スタートです。
歌声とは、そもそも何?
音程を上げる時の声帯閉鎖をお伝えする前に、まずは、歌声とは、そもそも何かを解説します。
その振動が誰かの鼓膜を揺らすことで、歌声だと認識されます。
歌声は振動なので、声の大きさを変化させる場合、振動の大きさを変化させます。
声の高さを変化させる場合、振動の細かさを変化させます。
このように、歌声とは振動です。
なので、音程を上げる時というのは、振動をより細かく変化させる時です。
では、振動の細かさは、どのように変化させるのでしょうか。
それを、次に解説します。
振動の細かさを変化させる方法
振動の細かさを変える方法は、いくつかあります。
その中で、一般的な方法は、声帯を伸ばす方法です。
その時に使われる筋肉は、有名な輪状甲状筋です。
輪状甲状筋は、声帯が収められている喉頭を構成する筋肉です。
喉頭は、合計4つの軟骨で構成されます。
1つが土台で、その上の前側に1つ、後ろ側に2つです。
そして、その前後の軟骨に、声帯がV字でくっついています。
声帯を伸ばす時は、前側の軟骨を前に傾けます。
その時に使われる筋肉が、輪状甲状筋です。
このように、声帯を伸ばす時に使われる筋肉は、有名な輪状甲状筋です。
ただ、輪状甲状筋だけを使っても、声帯は伸ばせません。
では、どのように伸ばすのか。
次は、声帯を伸ばす時のポイントを解説します。
声帯を伸ばす時のポイント
では、声帯を伸ばす時のポイントを解説します。
なぜなら、輪状甲状筋を使って声帯を伸ばすためには、対抗する力が必要だからです。
綱引きのイメージです。
綱引きでは、相手がいないと引っ張れませんよね。
それと同じです。
声帯を引っ張るためには、輪状甲状筋に力を入れるだけでなく、対抗するように、後ろ側の2つの軟骨をしっかりと固定させる必要があります。
後ろ側の2つの軟骨をしっかりと固定させないと、輪状甲状筋の力につられて、前に傾いてしまいます。
下記の文章をご覧ください。
“声帯筋が伸びるには、披裂軟骨がしっかりと固定される必要があります。そうでないと、張筋(声帯筋)と伸筋(輪状甲状筋)の力によって、披裂軟骨はいとも簡単に甲状軟骨前部へ引き寄せられてしまいます。”
(『イラストで知る 発声ビジュアルガイド』 株式会社音楽之友社、著者 セオドア・ダイモン、訳者 竹田数章(監訳)、篠原玲子、2020年、p.44)
甲状軟骨とは前側の軟骨で、披裂軟骨とは後ろ側の2つの軟骨です。
つまり、声帯は、前後の筋肉両方に力を入れて伸ばすということですね。
なので、声帯を伸ばすためのポイントとは、後ろ側の2つの軟骨をしっかりと固定させることです。
ただし、その披裂軟骨を固定する筋肉は、歌唱上の問題を引き起こします。
その問題が、音程を上げる時の声帯閉鎖が必要になる理由です。
それを、次に解説します。
音程を上げる時の声帯閉鎖
では、披裂軟骨を固定する筋肉が引き起こす問題を解説します。
まず、披裂軟骨を固定する筋肉は、後輪状披裂筋と言います。
なぜなら、後輪状披裂筋は、力が入るほど、声帯を開いてしまう筋肉だからです。
例えば、声帯を伸ばすために、輪状甲状筋に力を入れたとします。
その場合、先ほど確認したように、対抗する力として、後輪状披裂筋にも力が入ります。
これで声帯が伸びます。
ただ、その後輪状披裂筋は、力が入るほど披裂軟骨を開く筋肉です。
なので、輪状甲状筋に力を入れるほど、声帯が開いてしまうのです。
後輪状披裂筋について解説されている文章があります。
下記の文章をご覧ください。
“輪状軟骨から起こり、披裂軟骨に停止します。披裂軟骨を外転し、声帯を開きます。”
(『3オクターブは当たり前! 喉に優しい 魅惑のハイトーンボイス養成メソッド』 株式会社つた書房、著者 AKIRA、2016年、p.51)
輪状軟骨とは、甲状軟骨と披裂軟骨の下にある、土台となる軟骨です。
重要なのは、後半の文章です。
つまり、後輪状披裂筋に力が入るほど、声帯を開くということですね。
声帯を必要以上に開くと、息の圧力を上手く受けられず、息漏れになったり、狙った振動を作れなくなったりします。
また、あまりにも開いてしまうと、息の圧力をまったく受けられず、ただの呼吸になってしまいます。
なので、後輪状披裂筋が引き起こす問題とは、声帯で振動を作りにくくするという問題です。
そして、その対策が、今回お伝えする、私が意識している、音程を上げる時の声帯閉鎖です。
ここまで確認してきたように、輪状甲状筋に力を入れるほど、声帯は開きます。
なので、その対策として、輪状甲状筋に力を入れるほど、声帯閉鎖を意識します。
これで、幅広い音域で、しっかりと振動を作れます。
声帯閉鎖と喉締めの違い
最後に、声帯閉鎖の注意点です。
声帯を閉じようとして、喉を締めてしまうことがあります。
そうならないために、私が意識している、声帯閉鎖と喉締めの違いをお伝えします。
声帯閉鎖の場合は、喉頭内の筋肉で声帯の距離を縮めます。
喉頭の周囲の筋肉を緊張させないことがポイントです。
一方で、喉締めの場合は、喉頭の周囲の筋肉で、喉頭を締めます。
喉頭を思ったように動かせなくなるので、過剰な力で無理をしてしまい、喉を痛めてしまいます。
このように、声帯閉鎖と喉締めの違いとは、使う筋肉の違いです。
喉締めにならないように、くれぐれも注意してください。
まとめ
まとめです。
今回の記事では、私が意識している、音程を上げる時の声帯閉鎖をお伝えしました。
その内容は、輪状甲状筋に力を入れるほど、声帯閉鎖を意識するというものでした。
最後に、もう1つだけ注意点があります。
補助的なイメージで、声帯同士が近寄るきっかけを与えるぐらいの感じでOKです。
決して、声帯同士を押し付けないでください。
声帯同士が押しつけられた状態で振動することになるので、酷く擦れて、声帯を痛めてしまいます。
ただ、その一方で、声帯同士のの距離感を自在にコントロールできれば、息を歌声に効率良く変換できたり、息漏れやタイトなどの歌声を使い分けられたりします。
ぜひ、意識しながら練習してください。
では、今回の記事は、これで終わりです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。